ミュンヘン近郊で車中泊をした朝。
目を覚ますと、あいにくの雨だった。
少し名残惜しさを感じつつも、ミュンヘンはほどほどに切り上げ、ロマンティック街道へ向かうことにする。
“ロマンティック”という響きとは裏腹に、出発はしっとりとした雨の朝から。
雨のアウトバーンを西へ走る。
速度無制限で知られるアウトバーンだが、ひとたび渋滞に巻き込まれれば、ただの道である。

やがて渋滞を抜ける頃には天気も回復し、空も明るさを取り戻してきた。
平均200km/hほどで巡航していると、背後から一台のポルシェターボが現れ、あっという間に追い越していった。

本場ドイツのアウトバーンを駆け抜けるポルシェは、やはり格別に映える。
ロマンティック街道の観光は、一般的には北から南へ向かうルートが定番だが、今回はあえて南から入る。
最初の目的地は「ディンゲルスビュール(Dinkelsbühl)」



この街は中世の面影を色濃く残している。
外敵から守るため、街はぐるりと石壁に囲まれ、その外側を「ヴェルニッツ川(Wörnitz)」が流れる。まさに天然の堀だ。

防御のためなのか街への入口は非常に小さい。

かつては日没とともに門が閉ざされ、住人であっても中に入ることはできなかったという。思わずドラクエを連想してしまう。
そして門をくぐった瞬間、思わず足を止めた。
そこには、中世の街並みがほとんどそのまま残されていた。
ディンゲルスビュールは戦禍の被害をほとんど受けなかったため、15世紀の木造建築が今なお当時の姿を保っている。
“保存された街”ではなく、“生き続けている街”だ。



「ドイチェス・ハウス(Deutsches Haus)」はその象徴的な存在だ。
1440年頃に建てられた貴族の邸宅で、美しい木組み建築が目を引く。
酒神バッカスの像でも知られ、現在はホテルとして利用されている。

ちょっとした小径も美しい。

街を歩けば、小さな路地でさえ絵になる。
1450年頃に建てられたホテル「ゴールデン・ローゼ」も現役で営業しており、この街の時間の流れの長さを実感させてくれる。
ドイツ伝統の木組み構造(ハーフティンバー)が特徴的だ。
「聖パウル教会(St.-Pauls-Kirche)」

街の中心「聖ゲオルク教会(Münster St. Georg)」

教会の入口は、男の門(Männertor)と呼ばれている。
上部に安置されているのは、無原罪の聖マリア(Mary Immaculate)の像。

教会の外壁に掲げられている十字架にかけられたイエス・キリストの像。
リアルな感じが何とも・・・

聖ゲオルク教会は、柱が林立し網目状の天井が広がる「ホール式教会」としても有名で、南ドイツで最も美しいゴシック建築のひとつと称えられている。

イエスとその家族、そして聖人たちをテーマにした「ヨセフ祭壇」
中央で幼子イエスを抱いているのが聖ヨセフ。右が聖母マリア。

主祭壇(Hochaltar)
中央に十字架にかけられたイエス・キリストの姿が、非常に立体的な彫刻と絵画を組み合わせて描かれている。祭壇の頂点には、この教会の守護聖人である聖ゲオルクが竜を退治している場面の彫刻が見える。

翼状祭壇画と呼ばれるこの作品には、キリスト教の重要な聖人たちが描かれている。

中央には、聖母マリアの母である聖アンナが赤ん坊のイエスを抱き、その隣に聖母マリアが座っています。この構成は「聖アンナと聖母子」と呼ばれる伝統的な構図。
左は聖バルバラ(St. Barbara)彼女は鉱夫や建築家の守護聖人として知られている。
右は聖カタリナ(St. Catherine)彼女は学問や哲学者の守護聖人です。
街歩きツアー(Stadtführung)の案内板

昼間に歴史的な街並みを巡る一般的なツアーと、中世の衣装をまとった「夜警(Nachtwächter)」と一緒に、夜の街を散策するツアーがあり、非常に人気が高い。
街の西側に位置する「ゼーグリンゲン門(Segringer Tor)」


街の4つの門の中で最も古い歴史を持つ、かつては西からの敵を防ぐ重要な砦だ。
「新市庁舎(Neues Rathaus)」は14世紀から現在まで現役で使用されている。
日本でいえば鎌倉時代から室町時代にあたる時代の建物が、いまも行政の中心として機能しているという事実には驚かされる。
正面には町の紋章である「鷲」のマークや、中世の衣装をまとった夜警などの姿が描かれている。

ディンゲルスビュールの名物グルメはこの「シュネーバル(Schneeballen)」と呼ばれるお菓子。

見た目はシュークリームみたいでメッチャ美味しそう。
ん? か・・堅い。とにかく堅くて歯が立たない
おそらく昔の保存食みたいなものだろう。
味の方はというと・・・私の口には合わなかった(苦笑)

ゲロルシュタイナーはドイツで最もポピュラーなミネラルウォーターらしい。
超硬水でしかも炭酸水。
なぜこんな水がポピュラーなのか不思議なのだが、ドイツでは人気がある。

ラベル真ん中の紋章はドイツの田舎町"ゲロルシュタイン"の紋章だ。
紋章フェチなのでこの紋章に惹かれて買ってしまった(笑)
日本ではサッポロが販売しているようだ。
街のあちこちには、鉄製の装飾看板が掲げられている。
店の種類を示す役割を持っていたとされ、中世の名残を感じさせるディテールのひとつだ。
この看板は魚屋だろうか・・・?


ディンゲルスビュールはコンパクトな街で、短時間でも一通り見て回ることができる。
しかし、その密度は非常に濃い。
中世の空気をそのまま閉じ込めたような、静かで美しい街だった。