旅の記憶。

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消えゆくキハ40を追って-廃止前の日高本線、太平洋沿いの無人駅を巡る旅

鉄道に詳しいわけでも、マニアというほどの知識があるわけでもない。

それでも昔から、なぜか特定の分野だけは強く心を惹かれてきた。

そのひとつが気動車、なかでも「キハ40」だ。

理由は自分でもよく分からない。

ただ、見かけると安心するような、懐かしいような気持ちになる。

老朽化とともに全国で数を減らし、やがて姿を消していくキハ40。

「まだ走っているうちに、この目で見ておきたい」

そんな思いから、かつて各地へ足を運んでいた時期があった。

 

2011年6月、向かった先は北海道・日高本線

 

日高本線は、苫小牧から襟裳岬の手前、様似駅までの146.5 kmの路線だったが、2015年1月にこの地域を襲った高波の影響で、鵡川駅以南の116 kmもの区間が不通となり、そのまま復旧することなく2021年4月1日をもって廃止されてしまった。

今回は、当時の写真と記憶を辿りながら、キハが太平洋に寄り添うように日高本線を走っていたあの頃の風景を書き残しておこうと思う。

 

 

久しぶりに北海道へ行く機会に恵まれた。

飛行機を手配して・・・さて、今回はどこへ行こうか。

よし、まだ訪問したことがない日高へ行ってみよう。

地図を広げて目星をつける。

日高は苫小牧から太平洋に沿って南東へ向かった先だ。

 

 

苫小牧から無料の日高自動車道に乗って鵡川で降りてみる。

計画など何もないのだから行き当たりばったりなのだが、

地図を見ながら辺鄙そうなところを狙って行ってみる。

 

汐見駅

まず立ち寄ったのが「汐見駅」だ。

 

まわりには何もなく荒涼とした原野が広がっている。

これよ求めていたものは!素晴らしい・・・。

 

簡易な屋根があるだけの駅のホーム

 

わりと大きな待合室がある。

中に入ると、誰が設置したのか、いささか古ぼけたソファがずらり!

しかし・・・、座るにはちょっと勇気がいるような・・・(笑)

 

お約束の「駅ノート

 

石勝線で特急が脱線したらしい。

 

一日7~8本の上下列車があるようだ。

 

そうこうしていると苫小牧行きのキハ40が到着。

ブルーと白のツートンカラーにピンクのラインがかわいらしい。

 

二両編成の列車から降りてきたのは、おばあちゃん一人。

おばあちゃんは列車が出発するまで見送っていた。

 

車体には「優駿浪漫」の専用ロゴがあしらわれている。

日高の山々と名産のサラブレッドをモチーフにしたのだろう。

とてもいいデザインだと思う。

 

うなりを上げて出発していった。

 

清畠駅

汐見から日高方面へ向かう。

次に立ち寄ったのは「清畠」だ。

 

別に決めていた訳ではない。

たまたま通りがかりに目に入った駅の風情が気に入ったので引き返してみた。

 

待合室にあった「駅ノート」と怪しげな雑誌。"最強変造テレカ"っておいおいw

 

ホームに立つと目の前は草地とその向こうに太平洋が広がる。

遮るものは何もない・・・。

 

簡易的なホーム

 

 

豊郷から列車がやってきた。

乗降する者は誰もいない。

列車はうなりを上げて去って行った。

 

列車がいなくなったあともしばらくホームにたたずみ、ぼんやり海を眺めていた。


何もない・・・。誰もいない・・・。

時折吹く風と遠く波の音しか聞こえない。


でも、その何もないことが美しい・・・。


「いつか嵐の夜に来てみたい・・・。」

ふと、そう思った。


横殴りの雨風が吹き付ける夜。

雨が体を打つ音と荒れる波の音しか聞こえない。


そんな夜にもう一度来てみたい・・・。

 

大狩部駅

235号線をさらに南下していく。

途中で右側に海沿いの駅が見えたので立ち寄ってみようと思い、駅への入口を探すがどこを探しても見あたらない。

唯一国道からつながっている細い道は入口をチェーンで固く閉ざされている。

もう一度じっくり地図を見てみると・・・あった。

 

国道下のこんな狭いトンネルを抜けないと駅へアクセス出来ないのだ。
ん~秘境度満点(笑)

 

このトイレにしか見えないブロック造りの小屋は待合室だった。

 

私は今回、偶然通りがかって訪問したのだが、駅ノートを見るとその道の方には有名な「聖地」の一つらしい・・・。

 

太平洋から絶え間なく吹き付ける潮風。

駅名板はその自然の厳しさを雄弁に物語っていた。

 

ホームと海は本当に線路一本を隔てただけだ。木造の頼りない防波壁が線路を守っている。

2015年9月の台風17号により厚賀駅 - 大狩部駅間でさらなる路盤流出が発生したのはこのカーブのすぐ先だ。

 

線路の向こう側に立ってみた。線路際まで太平洋の荒波が打ち寄せる。

これでは台風や高波が来たらひとたまりも無いだろう。

 

本当に凄い駅だった。

冬の夜。ここでひとり列車を待つなんて・・・私には出来そうにない。

 

新冠

大狩部からさらに南下するとあたりはサラブレッド一色になる。

 

ここ新冠は北海道でも有数のサラブレッド生産地。

あの「ナリタブライアン」の生まれ故郷でもある。

サラブレッド銀座では給水器もお馬さんだ。

 

優駿スタリオンステーション

マーベラスサンデーオグリキャップらが種牡馬として在籍していた。

 

サラブレッド銀座の高台から牧場を眺める。

たくさんのサラブレッドが、のどかに放牧されている。

親馬に寄り添う子馬の姿がなんとも可愛い。

さすがにサラブレッドは無駄な肉が無く筋肉隆々で見惚れてしまう。

 

日本初の厩務員養成学校として注目されたが、あえなく廃校となってしまった。

 

新冠の町に入るとレコードの町の文字が・・・。
新冠とレコードに何の関係が?と興味がある方はこちらへどうぞ⇩

レ・コード館 Q&A|新冠町

 

道の駅「サラブレッドロード新冠」に到着。

ここにもレコード館なる施設がある。

 

さらに走ると「レコードの湯」なる看板を発見!

天気もいいので、ここらでひとっ風呂浴びることにしましょう(笑)

500円払って入場。こぢんまりしているが、なかなかいいお湯だ。

高台にあるので、露天からの眺めが素晴らしい。

他にお客もいないのでのんびりくつろいでいると中年男性5人組が入ってきた。

なんと全員立派な入れ墨が・・・(汗)

私は露天風呂からとっとと逃げ出したかったが、いま出て行くのは明らかに避けてるようでタイミングが最悪。

私はのぼせながらも平静を装った。

5人組はお互いにひと言も会話を交わさず、目も合わさずに露天風呂から出て行き、洗い場も激早で済ませ無言で退場していった。

いやはや貴重な体験をさせてもらった(笑)

 

さて、そろそろ空港へ向かわなくては。

 

帰り道の途中、左側に見えた橋がなんともいい雰囲気なので思わず車を止めた。

ここでキハを撮ったら絵になりそうだな。

と列車の時刻を調べると、15分程度で通過しそうだ。

 

思い描いた素晴らしい絵が撮れて嬉しい。

ところがこの慶能舞川(けのまいがわ)に架かる橋は、あの忌まわしき2016年の台風によりほぼ流されてしまったらしい・・・。

日高地方の景色は、絶えず海がそばにあり、とても自然豊かな印象が残った。

こんな素晴らしい景色と、地域の足として活躍していた日高本線が無くなってしまったことは、本当に残念だ。

利用者減による廃止とかならまだ最後のお別れも出来るが、ある日突然無くなってしまったのである。地域の方の落胆は相当なものだっただろう。

 

2011年6月13日 訪問

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